ひざの痛みのコラム
変形性膝関節症予防のための筋力トレーニング
- 2020/06/14 2020/09/09
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監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
中高年になると、変形性膝関節症で膝の痛みを訴える方が大変増えてきます。
変形性膝関節症は、さまざまな原因から起こる関節軟骨の摩耗から発症します。特に40代以降の女性に多くみられ、高齢になるにつれ発症率も高まります。
変形性膝関節症は筋力の低下が発症に関係しているとも言われているため、予防や改善には筋力トレーニングが重要です。筋力トレーニングというと、若い方やアスリートが行うような負荷をかけた、いわゆる筋トレが思い浮かびます。しかし、中高年の方は強く負荷をかける筋トレではなく、日常生活のなかに取り入れていくといった心がけが一番大切です。
筋力低下が招く恐ろしい事実
膝の関節を支える筋力が低下すると、関節の内側に負担が集中します。その結果、同じ場所の軟骨が少しずつすり減り、最悪の場合、膝関節が変形して歩くことが困難になります。
これが、変形性膝関節症です。
重症化すると、最後の手段は手術になります。手術はあくまでも重症化した場合の最終手段のため、そこに至るまでには、ヒアルロン酸関節注射やPRP関節注射(再生医療)などの治療もあります。
しかし、発症初期であれば、ご自身の努力で変形性膝関節症の進行を抑えることも可能です。
侮るなかれ、生活のなかのトレーニング
小さな積み重ねの筋力トレーニングもあなどるなかれ、日々の心がけが何歳になっても元気に歩ける健康な膝を保ちます。
変形性膝関節症は、動いたり、歩いたりすると痛みが出現します。
動くから痛むのだと思われがちですが、痛いからと言って体を動かさずにしておくと膝まわりの筋肉が落ちてしまいます。さまざまな研究においても、筋力のある方と弱い方を比較すると、筋力の弱い方が変形性膝関節症を発症しやすいこともわかっています。
また、身体を動かさないことによる体重増加などで、さらに膝に負荷をかけ、変形性膝関節症の進行が進む悪循環に陥ることもあるため、膝が痛いときこそ筋力トレーニングをする必要があるのです。
ここではご自宅で手軽にできるトレーニングからご紹介します。
1自宅でできる簡単トレーニング ①
自宅の小さなスペースで出来る、大臀筋(だいでんきん)のトレーニングをご紹介します。
大臀筋はお尻にある筋肉で、歩く動作などで使われます。大臀筋を鍛えることで、つまずくことを防ぎますから、ウォーキングなどを始める際にも重要な筋肉になります。
- 1 まず、仰向けに寝て両膝をお尻に近づけて曲げてください。上半身はリラックスします。
- 2 ゆっくりとお尻を床から離して上げていきます。
- 3 膝とお腹が一直線になる位置まで上げます。
- 4 お尻を持ち上げた位置で維持したまま3秒キープします。そのときにお尻をキュッと締めるのがコツです。
- 5 頂上で3秒数えたら、ゆっくりお尻を床に下ろします。
- 6 締めていたお尻もゆるめます。
- 7 これを3~5回繰り返します。
※最初はできる回数からスタートして回数を増やしていきましょう。
※お尻を持ち上げる際に腰を反らせないように注意してください。
※腰の痛みが強い方は痛みが落ち着いてから実施してください。
2自宅でできる簡単トレーニング ②
脚はさまざまな筋肉で構成されていますが、太ももの内側(内もも)にある内転筋群(ないてんきんぐん)は主に脚を閉じるような動作で使われています。
ここの筋肉が弱くなると太ももが外側へ開きやすくなるためO脚が進行する原因になります。
内転筋群を鍛えO脚の進行を抑えることで変形性膝関節症の予防に繋がりますので、ぜひトライしてみてください。
- 1 まず、まっすぐ立って脚を開きます。家の中の場合は、裸足がベストです。
- 2 膝の内側に硬めのクッションや枕などを挟み、内ももの力を入れて、押すようにして5秒間キープします。
- 3 これを3~5回繰り返します。
筋肉がつき、膝のサポートが強くなってきたら、いよいよウォーキングに行ってみましょう。
負担の少ないウォーキングもお勧め
膝への負担が少なく、日常生活のなかにすぐに取り入れられるウォーキングもお勧めです。
それもただ歩くだけでなく、筋肉に負荷をかける早歩きや大股歩きを行うと効果があります。
ウォーキング用のシューズを履いて膝に衝撃を与えないように、かかとから着地し、最初は無理せず1万歩以下から目指してみてください。またウォーキングの姿勢も大切です。
脚がO脚のように開かないように、大臀筋(お尻)を閉めるようなイメージをして歩くと良いでしょう。
ウォーキングをはじめる際にもう一つ大事なこと
ウォーキングを始める際にもう一つ大事なことは、ご自身の膝の状態に合わせた靴や補助器具を利用することです。変形性膝関節症が進行していくと、多くの場合、内側によりたくさんの荷重がかかるため、内側の軟骨ばかりがすり減り進行を早めてしまいます。
それを防ぐための補助として、ご自身にあった靴選びや、靴のインソール(中敷き)を靴の中にいれて、荷重のバランスを調整するというものです。
インソールもあくまで対処法ではありますが、バランスの崩れた膝の軟骨にかかる負荷を軽減することができます。また運動前と運動後はストレッチを十分にして柔軟性を保ちましょう。
- 2020/06/14 2020/09/09
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監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
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