ひざの痛みのコラム ひざの痛みのコラム

ひざの痛みのコラム

運動器疾患における、膝や肘のPRP療法

  • 2020/09/15 2020/09/15
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

PRP(多血小板血漿;Platelet-Rich Plasma)療法は、2000年頃からメジャーリーガーやプロサッカー選手が筋肉や靭帯などの組織修復を主とした治療に使用したことから、日本でも注目を浴びるようになりました。

このコラムではスポーツにおける肘や膝などの痛みに対してPRP療法がどのような効果をもたらすのかについてご説明いたします。

膝の手術の回復を早めるPRP療法

膝の手術の回復を早めるPRP療法 膝の手術の回復を早めるPRP療法

PRPは患者さまご自身の血液を採血し、遠心分離機にかけて、血液中にある血小板を濃縮・抽出して作製します。それを患部に注射することにより、血小板の働きを活かし、組織の修復力を促す治療です。

低侵襲かつ早期回復できるなどの多くの臨床成績報告もありますので、1例をご紹介します。膝の関節内にある「膝前十字靱帯(ひざぜんじゅうじじんたい)」の損傷もスポーツ選手に多くみられます。

その症状は、運動中の衝撃により、一時的に膝が外れたようになり、激痛で動けなくなったりして時には手術が必要になります。

十字靱帯の治療は、「自家腱」といって、自分の身体の一部の腱を移植する再建術が行われますが、快復には移植した腱が、成熟するかかが重要だといわれています。

膝の手術にPRPを併用した場合の研究

膝前十字靭帯再建手術 膝前十字靭帯再建手術

膝前十字靱帯再建術の際に、PRP療法を併用しなかった場合と、併用した場合を比較した海外の研究があります。

移植腱の成熟度をMRIで観察した結果、PRP療法を併用しなかった場合は平均369日も要したのに対し、併用した場合は平均177日と約半分の日数に短縮されたということです。

慢性的なテニス肘やジャンパー膝にも有効

慢性的なテニス肘やジャンパー膝にも有効 慢性的なテニス肘やジャンパー膝にも有効

PRP療法は、いわゆるテニス肘やジャンパー膝にも効果があります。テニス肘と言われる肘の痛みは、テニスをする方以外にも手作業の多い仕事をしている方など、肘の外側を痛める症状(上腕骨外側上顆炎)も含まれます。ジャンパー膝については、その名の通り、ジャンプ動作の多い方にしばしばみられる病気です。

症状としては、ジャンプや歩行時、膝を曲げる、押すと痛むなど膝周りの腱の炎症から起きる痛みが挙げられます。

慢性テニス肘の痛みが改善した研究

慢性テニス肘患者の痛み改善率 慢性テニス肘患者の痛み改善率

海外ではテニス肘の患者230人に対して、PRPで治療した人とそうでない人を比べた研究があります。慢性的な痛みの改善率は、24週目ではPRPで治療しなかった人が56.1%に対し、PRPで治療した人が71.5%、でした。

PRPで治療した人のほうが、あきらかに痛みの改善率が高いという結果です。

ジャンパー膝(膝蓋腱炎)のスポーツ選手46人を対象にしても、研究が行われています。PRP療法と体外衝撃波療法(音波の一種を用いて患部に照射する治療法)の効果の比較をしたところ治療後、6ヵ月と12ヵ月目では、PRP療法を受けた選手のほうが、より痛みを改善されたとのことです。

PRP療法効果の原理

PRPを患部に注射した際に、多量の成長因子を放出します。この成長因子には、一般的に1週間程度で組織修復のプロセスを開始する働きがあります。

さらに治療後2週間程度で痛み軽減などの効果が現れてきます。これまで、痛みへの対処療法として、ステロイド治療を行っていた方には朗報ではないでしょうか。

ステロイドでは、痛みが取れても組織治癒力も抑えてしまうため、残念ながら完治することはありません。PRP療法であれば、組織を修復し、痛みを改善する効果が期待できるため、運動器疾患に有用なことが伺えます。

参考文献
  • 2020/09/15 2020/09/15
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

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