ひざの痛みのコラム
変形性膝関節症 膝サポーターの効果と選び方
- 2020/06/14 2020/09/09
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監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
変形性膝関節症の痛みを軽減するための膝サポーターは、さまざまな種類があり、何が良いのか悩まれる方も多いと思います。このコラムでは膝サポーターの種類や選び方、また膝サポーターを使用することで、どんな効果が期待できるかをご紹介させていただきます。
膝サポーターは、変形性膝関節症を治せるものではありませんが、膝の痛みを軽減したり膝を安定させたりして、変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。
膝をサポートすることで膝の痛みへの不安を取り除き、運動をする前向きに気分になれるように参考にしてください。
変形性膝関節症の痛みを緩和する膝サポーター
変形性膝関節症の方の膝の痛みを緩和する膝サポーターの効果は主に以下の3つです。
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1サポーターによる膝の冷え防止
寒い時期や夏場の冷房で膝が痛む場合は、脚の冷えが原因と考えられます。
身体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなることにより膝の筋肉が硬くなります。この状態で動かすと膝の筋肉に負担がかかり痛みを感じるようになります。
ですから、身体が冷えているときに、膝の痛みが出るような場合は、まずは膝を温めることが、痛みの緩和にもつながります。
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2サポーターで触圧覚を刺激
触圧覚は皮膚に対して何かが触れたり、圧力が加わるような刺激に対する感覚のことを言います。触圧覚は痛みを感じる痛覚よりも早く脳に伝わります。
サポーターはこの脳の電達反応を利用できる、有効な手段となります。痛みのある膝をサポーターで圧迫し、触圧覚を脳に伝達させることで、痛覚の伝達を鈍くするのです。
しかし、圧迫し過ぎるとより逆に血行不良を起こしてしまいますので、ご自分にあった強度にすることやサイズ、素材選びが大切です。
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3サポーターで膝を安定
変形性膝関節症は、進行の過程で軟骨がすり減っていく病気ですが、進行が進むと膝の安定性が低下します。
そこで、膝サポーターを着用して膝を固定することで、余計なぐらつきを防き、関節への負担を軽減させます。
O脚変形の強い方や膝の曲げ伸ばしに、不自由を感じる方には、機能性の高い膝サポーターの着用をお勧めします。そして、何より重要なのは、膝軟骨への負担を膝サポーターによって緩和して、傷みのコントロールをしつつ、筋力の向上に活用することです。
変形性膝関節症の悪循環を断ち切るために
変形性膝関節症の初期では、痛みが出たときに、安静にしているとその痛みが無くなります。ですから、膝が痛くなると安静にすることが良いことだと勘違いしがちです。
しかし、安静を心がけ動かないようになると、膝を支える筋力の低下や動かないことによる体重増加を招き、さらに膝の負担が増加してしまいます。これにより痛みが増幅するという、悪循環に陥ってしまいます。
この悪循環を断ち切って、好循環に切り替えるための最初の一歩は、多少の痛みは辛くても意識して動くことです。好循環に切り替えられれば、膝を支える筋力アップや体重の減量などにつながり、膝の痛みが緩和され動けるようになっていきます。
膝サポーターは運動療法の際に、上手に膝をサポートし、膝の痛みへの不安を取り除き、運動をする前向きな気分にさせることに役立ちます。
以下では、適切な膝サポーター選びのための情報をお伝えします。
1膝サポーターのサイズ選び
膝サポーターを選ぶときにまず大切なのは、サイズです。サイズが小さすぎると、膝のみならず膝周りも締めつけられるため、うっ血したり動きにくくなったりしてしまいます。逆にサイズが大きすぎるときちんと固定できません。
衣服のサイズ表記と同じ感覚で選んでしまうのではなく、膝周りのサイズをあらかじめ確かめてください。正しいサイズを選ぶための計測方法をお伝えします。
- 1 まず、椅子に座って、軽くひざを曲げます。
- 2 ひざ頭の周囲にメジャーを回して測ります。メジャーはピッタリフィットするナイロン製や布製がお勧めです。計測は一箇所のみで大丈夫です。
- 3 膝のサイズがわかったら、○㎝~○㎝はS・M・Lのサイズと、対応範囲が表記されている商品を必ず選んでください。
2膝サポーターの形状
サイズをきちんと確認できたら、次は形状です。膝サポーターには大きく分けて、筒状タイプのものとベルトタイプのものがあります。筒状タイプの膝サポーターは保温性に優れていますので、冷えると膝が痛むような方にお勧めです。
ベルトタイプのサポーターは歩く頻度によって使い分けます。歩くことが多い時は重心を外側に戻す膝サポーターを、歩くことが少ない時は膝の動きを整える膝サポーターを使います。
膝サポーター使用の注意点
膝サポーターの効果を十分に発揮させるために、事前に着用方法をしっかり確認して使用することが重要です。
膝サポーターは膝の骨の形や筋肉にフィットするように作られていますので、正しく装着できなければ、膝サポーターの機能が発揮されません。見た目の感覚で装着して、ずり落ちたり、血行不良を引き起こしたり、最悪の場合は今まで痛くなかった部位まで痛めてしまうことになりかねません。また、動くときの補助に使用し、就寝時には膝サポーターを外してください。
膝サポーターでは変形性膝関節症は治りません
膝サポーター使用の重要な点をもう一度お伝えします。
変形性膝関節症の方においては、膝サポーターを使用したからといって、変形性膝関節症が完治するわけではありません。しかし、膝サポーターを使うことで、膝の痛みを抑え、日常生活の動作や階段の昇降、ウォーキングをスムーズにしてくれます。身体を動かし筋肉を付けることで、変形性膝関節症の進行を遅らせることができるのです。
もうひとつ、ご自身の持つ「自然治癒力」を利用し、変形性膝関節症の進行を遅らせる方法があります。
PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)※詳細は別ページ参照と呼ばれるもので、ご自身の血液中に含まれる血小板を利用した画期的な治療です。当院でご案内できる治療ですので、お気軽にご相談ください。
膝サポーターの効果がうすい!と感じたら、クリニックへ
サポーターは変形性膝関節症が軽度の場合、ある程度の効果が期待できるでしょう。膝の冷えを解消したいときや支える筋力不足により、膝を安定させたいときは、膝サポーターはその役割を果たします。
しかし、変形性膝関節症の痛みの程度や状態は人によって異なります。膝の炎症が強い場合は、サポートにならない上に、痛みを増幅させてしまうこともあります。
ですから、膝サポーターを使用してみても痛みが緩和されない、より痛みが増幅してしまった場合はすみやかに使用を中止して、医療機関で相談してください。
そして膝サポーターの使用の前にも、専門の医療機関で膝の状態を事前に確認し適切な方法を指示してもらうことが望ましいです。
- 2020/06/14 2020/09/09
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監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
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