ひざの痛みのコラム
変形性膝関節症、膝の痛みの原因と予防・治療法
- 2020/08/18 2021/07/19
-
監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
膝の痛みを感じる方は、年齢とともに増加傾向にあります。朝起きあがって活動をしようとした瞬間に、膝に痛みを感じる。椅子から立ちあがるときや階段を降りるときなど、日常の動作で繰り返し膝が痛くなる。
このような場合は「変形性膝関節症」かもしれません。変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、関節にある軟骨がすり減って変形したり、骨と骨がこすれたりすることで、炎症や痛みなどがでる病気です。膝の関節だけでなく、股関節や足首でもよくみられます。関節症は悪化すると、残された治療方法は人工関節手術のみなど限られてきます。最悪の事態を避けるためにも、原因を知って早めの予防と対策をおこなうことをオススメします。
このコラムの目次
変形性膝関節症とは
関節痛の原因にいちばん多いのが変形性関節症です。私たちの関節は通常、スムースに動くように軟骨がクッションとなっています。
しかし、その軟骨が加齢とともにもろく崩れやすくなったり、すり減ったりして炎症を起こすのです。もっとも変形性関節症になりやすいのが膝です。膝への負荷は立っているときだけでなく、座ったり立ち上がったりするときにも、大きな力が加わります。さらに加齢によって筋肉が衰えると、膝を支える筋力も低下し、膝への負荷がより大きくなるため、痛みを訴える方が多くなります。
また、膝が痛くなると動けなくなってきますので、活動量が減った結果、体重が増加するなど、膝への負荷がますます増加するという悪循環に陥ってしまいます。
運動不足だけでなく、過度の運動も原因になる
運動不足で膝をあまり使わなくなると、膝関節の柔軟性が失われ、新陳代謝が衰えて関節が硬くなっていきます。膝の関節が硬くなると、周囲の組織に痛みが生じることもあります。反対に普段運動していない方が、急に走ったり長時間歩いたり筋肉トレーニングをすると、その負担によって膝の中で炎症が起き、痛みや腫れの原因になったりします。
近年では、中高年からスポーツを始めたことで、過度の運動による関節障害が増えていますので注意が必要です。中高年の方はすでに、関節の軟骨がすり減り、軽度の変形性関節症を起こしていることが少なくありません。それを知らずに、若い頃と同じように無理をしてしまうことが主な原因です。
変形性膝関節症になりやすい方
1肥満気味の方
体重が重いと膝関節にかかる負担が大きくなるため、関節症が起こりやすくなります。両足で立っている状態では、全体重を二本の脚で支えているため、その体重分が同時に膝にかかっていることになります。歩いたり走ったりすれば、さらに数倍にもなって膝に負荷がかかります。
2O脚気味の方
いわゆるO脚は、正式には内反膝(ないはんしつ)と言います。O脚は両方の膝が外側に彎曲し、膝が外側に曲がっている状態になっているため、膝内側の軟骨がすり減りやすくなります。
O脚かどうかをご自身で簡単に判定する方法は、まっすぐ立って、両足のかかとをこぶし1つ分開き、つま先を15度ほど外側に開くように立ちます。そのときに膝が外側を向いている場合や普段履いている靴底の外側が減る方は、O脚の傾向があります。
O脚の原因にもさまざまありますが、長年の生活習慣が原因の場合は、悪い姿勢や歩き方、靴などが原因となっていることもあります。
変形性膝関節症の進行
-
1健康な軟骨の状態
正常な関節には、骨と骨とが繋がる箇所の骨の端の方に軟骨があります。
この軟骨が骨の表面にあることで、クッションの役割を果たし、痛みのないスムースな関節の動きが可能になっています。
-
2軟骨の弾力がなくなる
軟骨は通常、水分を含んだスポンジのようになっており関節が受ける衝撃を吸収し、骨と骨の直接の摩擦を防いでいます。
しかし加齢とともに軟骨の弾力性がなくなり、関節のすき間が減少していきます。すると、部分的な関節の負担が増えてきて、骨棘(こつきょく)と言われるトゲできはじめます。
これにより痛みを感じることがありますが、初期の変形性関節症の痛みは、安静にしていれば自然に消失したり湿布薬などを貼ったりしても治まります。
-
3症状の悪化と悪循環
軟骨がさらにすり減って関節のすき間がより狭くなり、O脚の進行が進み骨棘も増えます。
関節の軟骨は一度欠けたり、すり減ったりすると元に戻らないため、症状は少しずつ悪化していきます。やがて簡単な日常の動作でも痛みを感じる頻度が増えていきます。
痛むので余計に歩かなくなるため、筋肉がさらに衰え、症状も進むという悪循環におちいりやすくなります。
-
4歩行困難と常にある痛み
関節のすき間がほぼ無くなって、膝の骨と骨が直接当たるようになり、動かなくても痛みを感じる状態です。
ここまで進行すると通常の歩行もむずかしくなり、治療方法も大がかりなものやリスクを伴う治療に限られてきます。
変形性膝関節症を予防しよう
変形性膝関節症の予防のポイントは、大きく2つです。
一つ目は膝に負担をかけないように心がけること。
二つ目は日ごろから運動で筋肉を強化し、さらに関節を柔軟にしておくことです。
1膝に負担をかけない具体的な方法
- 正座をさける
- 肥満であれば減量する
- 膝を冷やさないようにする
- クッション性のよい靴をはく
- O脚気味の場合は、インソールで補正する
- 歩き方を見直し、正しい歩き方を身につける
- 正しい姿勢を身につける
- 洋式トイレを使用する
2筋肉強化と関節の柔軟性を保つ具体的な方法
- 運動の前は準備運動をきちんとする
- 運動後はストレッチをする
- 運動は徐々に行う
- 翌日に疲れが残らない程度に行う
- 大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)を鍛える
膝の痛みを諦めない!治療を受ける場合は?
飲み薬や湿布の効果がない、ヒアルロン酸の関節注射を受けてもすぐ痛みがぶり返す、などの方は、手術を検討されることもあるかと思います。しかし、手術は体に大きな負担がかかりますし、長期間の入院やリハビリテーションが必要になります。また、中には手術をしても痛みが残って生活に支障がでる方もいらっしゃいます。
そのような理由から、手術を決断する前にPRP療法を試してみる価値があると考えています。
PRP療法は、患者さまご自身の血液から、多血小板血漿だけを取り出し、膝に注入するだけで、痛みを抑えるだけでなく、変形性膝関節症の進行を遅らせることの出来る画期的な治療方法です。
PRP関節注射で投与する血小板には、さまざまな成長因子が含まれています。この成長因子が関節内や周辺の組織、関節液に働きかけることで、損傷した組織の修復が促されます。
当院ではオリジナルの作製法によって、膝関節症に最適な濃度のPRPを作製することができます。それにより、鎮痛効果の長期持続や、高い組織修復の効果が見込めます。
- 2020/08/18 2021/07/19
-
監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師
COLUMNひざの痛みのコラム
-
中高年になると、変形性膝関節症で膝の痛みを訴える方が大変増えてきます。 変形性膝関節症は、さまざまな原因から起こる関節軟骨の摩耗から発症しま…
-
変形性膝関節症の痛みを軽減するための膝サポーターは、さまざまな種類があり、何が良いのか悩まれる方も多いと思います。このコラムでは膝サポータ…
-
変形性膝関節症の治療法で知られているヒアルロン酸注射とPRP注射はどんなものなのか、どのような目的で行われるのか、効果の違いはなにかをお話しし…
-
変形性膝関節症の痛みが緩和されるということで、PRP関節注射を検討される方が増えてきています。
-
PRPとは血小板を多く含む血漿のことですが、本来血小板というのはどういった働きをするのでしょうか。このコラムでは血小板の働きについてわかりやす…