下肢静脈瘤の治療の一つに手術治療があります。
手術といっても現在は血管内治療といって、切らずにカテーテルを血管内に挿入して片足15~20分程度で行える日帰り治療(保険適応)が主流です(レーザー治療または高周波治療)。

以前は、日帰りとはいかず皮膚を切って静脈を抜く手術(ストリッピング手術)などが主に行われていました。

下肢静脈瘤の治療全般についてお知りになりたい方は以下の記事をご覧ください。

ここでは下肢静脈瘤の血管内治療(レーザー・高周波)について解説します。

※ご来院をご希望の方は、お電話(03-3902-1111)またはメール予約よりご予約下さい。

血管内治療とは?

血管を内側から焼いてふさぐ治療法

下肢静脈瘤の手術は現在、血管内治療といってメスで皮膚を切ることなくカテーテルという細い管を血管にに入れて治療ができるため、ほとんど日帰り手術で行われています。

血管内治療の正式な手術名称は「下肢静脈瘤血管内焼灼術けっかんないしょうしゃくじゅつ」といいます。

焼灼しょうしゃくという名の通り、下肢静脈瘤の原因となっている静脈を焼いて治療します。
その焼くための手段がレーザーだったり高周波だったりするのです。

レーザー治療も高周波治療も、原因となる静脈を焼くという治療法は同じですしいずれも血管内にカテーテルを挿入して行うという基本は一緒です。

血管を焼く際の熱を出すためのシステムがレーザー光を使用するのか、高周波を利用するのか、つまり機器の違いとなります。

下肢静脈瘤レーザー治療

実際に治療する血管はどこ?

さて、上の絵を見て疑問に思う方もいらっしゃると思います。
この絵ではふくらはぎの血管が浮き出て症状のでているところではなく、太ももにカテーテルを入れて血管を焼いています。
血管内焼灼のカテーテルの図
血管がボコボコしているところにカテーテルをいれるのではないのでしょうか?

これには下肢静脈瘤がなぜ起こるのかを理解していただく必要があります。
血液を心臓に戻す血管を静脈といいますが、足の静脈は下から上に重力に逆らって血液を戻さなくてはなりません。

これがうまくいかなくなると静脈血液の逆流が起こってしまい、多くはその逆流のポイントが太ももの内側(足の付け根あたり)だったり膝の裏側あたりだったりするのです。

重力で血液が足の下の方にたまってふくらはぎに症状が出やすいのですが、実際に原因はそれより上流にあるのです。
ですから下肢静脈瘤の治療のポイントは、ボコボコ血管の部位ではなく逆流ポイントになるのです。

ボコボコ血管の部分と原因の場所は必ずしも一致するわけではありません。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

血管内治療は保険適用

血管内治療は日本でも2000年ごろから行われていましたが、当初は自由診療だったため費用が高く、治療は画期的であっても多くの方が受けられるわけではありませんでした。

2011年にレーザー治療が、2014年に高周波治療が保険適用になり、いまは多くの場合で下肢静脈瘤治療における主役になっています。

血管内治療の3つのメリット

メリット1:短時間

レーザー治療や高周波治療の手術そのものにかかる時間は平均15分~20分です。
日帰り手術で入院の必要はありません。


メリット2:痛みがほとんどない

カテーテル(太さ2㎜くらいの管)を入れる部分の皮膚に局所麻酔をする時と、熱を加える部分に局所麻酔をする際にチクッとした痛みを感じる程度です。
しかし、これらの前にも点滴から静脈麻酔(ウトウト眠ってしまうお薬、鎮静剤)をしますのでチクッすらもわからず気づいたら終わっていたと感じる方も多くいらっしゃいます。

また、術後の痛みについては個人差がありますが通常痛み止めを飲む必要がないことが多く、もし内服したとしても1日~2日程度です。


メリット3:術後の制限がほとんどない

手術後は歩いて帰ることが可能です。
特別安静が必要ではなく、家事も普通に行えます。

シャワーや軽い運動はは翌日からになります。

血管内治療の実際の手順

血管内焼灼術(レーザー・高周波)

針穴の傷口からコブを抜き取る(スタブアバルジョン)

血管内治療はあくまで逆流している血管を焼いてふさぐ手術ですので、瘤(コブ)に対して直接的な治療ではありません。
もちろん血管内治療だけで浮き出た血管はかなりきれいにはなります。

しかし、かなり大きくなってしまった瘤に対しては別途処置をすることでよりきれいに治療をすることが可能になります。

数㎜の針穴から瘤を切除する方法をスタブアバルジョンと言いますが、血管内治療に付加してこの治療を行うことがあります。
所要時間も短く、この方法によって合併症が起こることもないので太い血管の瘤がある場合には血管内治療だけで治療できるのか付加的にスタブアバルジョンを行う必要があるのかを主治医と相談すると良いでしょう(熱で焼く血管の長さを長めにすることで、スタブアバルジョンまで必要にならないこともあります)。

レーザー治療と高周波治療の違い

血管内治療の基本的な手技はどれも一緒ですが、血管を焼く際にレーザーなのか高周波なのかで大きく分かれます。

レーザー治療

レーザーと一言で言っても、これもレーザー光の波長と照射方法の違いによってデバイスが違います。

2011年1月に最初に保険適応になったのは波長980 nmのレーザーでした。
しかし980 nmのレーザーは術後の痛みや皮下出血、再発が多く、2014年に1470 nmレーザーが保険適用になりこれにより治療後の満足度が向上しています。

レーザーの波長980 nmと1470 nmの差は、どれぐらいのエネルギーで静脈を焼くことができるかの違いです。
当然、焼くのに大きなエネルギーを要すれば合併症のリスクが上がります。

1470 nmのレーザーはエネルギーが拡散せずに効率よく熱エネルギーに変換され焼灼することが可能になったのです。

高周波治療

一方、高周波は2014年6月に保険適用になりました。
高周波とは周波数の高い交流電流のことをいいます。

光も音にも当てはまりますが、周波数とは1秒間につくる波の数です。
家庭用交流電流は50Hzもしくは60Hzに対し、高周波治療で使う交流電流の周波数は460kHz(46,000Hz)とかなり大きいことがわかります。

一般に使用されている高周波電流といえばIHクッキングヒーターがあります。
IHクッキングヒーターはコイルに高周波電流を流し発生した磁力によって誘導された電流を流し、その電気抵抗によって熱を発生させています。

下肢静脈瘤の高周波治療では、カテーテル先端にある金属に高周波電流が流れ熱が発生し、これに静脈の壁をくっつけることで焼くことができます。

金属の周りは絶縁体になっていますし、そもそも高周波電流は人体にはほとんど流れないので感電しないため安全性が高いのです。

高周波治療のメリットはレーザー治療に比べて時間がより短いことです。

一方デメリットは、高周波を出すカテーテルの先端の長さが7㎝もあるため、くねくね曲がっている血管内を通して焼くのには技術が必要になります(ただし現在は、高周波の出る部分がより短い3㎝のタイプが登場しています)。

結局、レーザーと高周波治療とどちらが良いでしょうか?

かつて高周波治療が出たばかりの初期のカテーテルでは、レーザー治療に軍配が上がりましたが、現行の高周波カテーテルは治療成績が大幅に改善しレーザーと同等の結果です。

実際、2017年の日本静脈学会の発表演題の中で、980 nmレーザー、1470 nmレーザー、高周波とを比較した発表がありました。
980 nmのレーザー治療は1470 nmや高周波に比べて皮下出血(いわゆる内出血)や痛みの頻度が高く、再発率もやや高い結果でしたが、1470 nmと高周波とでは皮下出血や痛みの頻度や再発率はいずれも低く同じ治療成績でした。

現在のところ、治療成績での差異はほとんどないと考えて良いでしょう。

痛み(左)と皮下出血(右)の比較

Closure FAST = 高周波、Laser=レーザー(980 nm)

  1. Almeida JI. Recovery trial interim results, 34th Veith Symposium. Nov 14-18, 2007. New York.
  2. Moderate to severe ecchymosis is defined as bruising over greater than 25% of the treated surface area.

レーザー治療・高周波治療Q&A

治療後どれくらいで血管は目立たなくなりますか?
時期については、逆流の程度や血管の太さにもよるので一概には言えませんが、自然に改善されていき、気づいたら症状もなくなっていたという人が多いようです。静脈瘤自体がどの程度小さくなるかは個人差があります。コブが仮に残っても、痛みなどの症状はほとんどの場合改善します。

レーザーや高周波を浴びても身体に影響はありませんか?
レーザーや高周波は下肢静脈瘤に限らず、脳や心臓など様々な臓器に応用されており安全性が確立されています。施術者が確かな技術をもって使用している場合には安全性は確保されます。

治療後に出る痛みはどの程度のものですか?
痛み止めを飲んでやり過ごせる程度です。治療から数時間後、麻酔が切れて若干の痛みがある場合があります。痛み止めが処方されますが飲まないですむ方も多くいらっしゃいます。痛み止めを飲んでも治まらない強い痛みがある場合はすぐに主治医に連絡を取りましょう。

治療後すぐに車を運転できますか?
治療内容的には運転は可能です。しかし静脈麻酔として鎮静剤を使用してぼーっとしていたり、足に使用した局所麻酔の影響で普段と感覚が異なっている可能性があります。当日の運転は避けられた方が無難です。

傷口は毎日消毒が必要ですか?
血管内治療では傷口はは針の穴だけですので、特別な処置は必要ありません。

スポーツジムやゴルフはいつごろからできますか?
軽い運動や上半身だけのトレーニングであれば、治療当日でも問題ありません。ジョギングや水泳、ゴルフは1週間が目安です。あまり無理すると痛みが出てしまうこともありますので術後1週間を超えてから無理のない範囲で徐々に慣らしていくのが良いでしょう。