下肢静脈瘤について 下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤のコラム

足の血管が目立つ「ボコボコ浮き出る・透けて見える」病気とは!?

  • 2020/05/15 2020/07/29
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

下肢静脈瘤の代表的な症状で「足の血管が浮き出る」、「足の血管が透けて見える」ようになると、見た目が悪くなり、特に女性では恥ずかしくて足を出しづらくなる人もいます。男性でも温泉に行きづらいと悩む方がいらっしゃいます。
ここではそんな「足の血管が浮き出る」「足の血管が透けて見える」というこの病態と治療について説明しましょう。

足の血管が浮き出る、透けて見える原因

足(脚)の血管は、よく見ると青っぽく浮き出ていたり、赤紫色でクモの巣のように糸状もしくは網目状に広がっているでしょう。血管が見える場所は足のなかでも、太ももや太ももの裏、すね、膝の裏側、ふくらはぎ、足首(特にくるぶし)のあたりなどさまざまです。

※厳密には「脚(あし):ももの付け根から足首まで」、「足(あし):足首からつま先まで」ですが、ここでは厳密に区別することなくまとめて「足」としています。

この目立っている血管は、血管の中の「静脈(じょうみゃく)」に分類されるものです。ここで少し静脈について説明しておきましょう。

血管には「動脈」、「静脈」、「毛細血管」の3種類があります。動脈とは、心臓から全身に血液が送り出されるときに通る管で、静脈とは、心臓に返ってくる血液の流れる管です。毛細血管とは、心臓から送られた酸素や栄養素を含む血液を体中の細胞や臓器に輸送し、同時に老廃物を回収する役割をしています。

足の血管が浮き出る、透けて見える原因

そのなかでも、静脈が病的にふくらんでコブのようにボコボコしたり、細い毛細血管がクモの巣状・網目状増えた状態を「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」と呼びます。静脈がふくらんでしまう詳しい原因については以下をご参照ください。

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このようにふくらんでしまう静脈には、実は出来やすい場所があるのです。

実際の写真を見ながらチェックしてみましょう。

静脈瘤の症状:ボコボコ血管・透けて見える血管

静脈がふくらんでしまう主な場所は決まっています。

  • 太ももの内側伏在静脈瘤・分枝静脈瘤が現れやすい
  • くるぶしの内側の周囲伏在静脈瘤・分枝静脈瘤が現れやすい
  • ひざの裏側網目状静脈瘤が現れやすい
  • 脚の外側クモの巣状静脈瘤・先天性静脈瘤が現れやすい
  • ふくらはぎの内側伏在静脈瘤・分枝静脈瘤が現れやすい
  • お尻と足の境目骨盤内の静脈の関係した静脈瘤が現れやすい

ボコボコ血管・透けて見える血管を実際の写真でチェックしてみましょう。

太もも内側の浮き出た血管

  • 太もも内側の浮き出た血管
  • 太もも内側の浮き出た血管
  • 太もも内側の浮き出た血管
  • 太もも内側の浮き出た血管

足首・くるぶしの浮き出た血管

  • 足首・くるぶしの浮き出た血管
  • 足首・くるぶしの浮き出た血管
  • 足首・くるぶしの浮き出た血管
  • 足首・くるぶしの浮き出た血管
  • 足首・くるぶしの浮き出た血管

膝のうしろの浮き出た血管

  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管
  • 膝のうしろの浮き出た血管

脚の外側の浮き出た血管

  • 脚の外側の浮き出た血管
  • 脚の外側の浮き出た血管
  • 脚の外側の浮き出た血管

ふくらはぎの浮き出た血管

  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管
  • ふくらはぎの浮き出た血管

血管の浮き出方によって種類が分けられる

上記の写真で見るとかなり血管が目立つのがわかります。ボコボコと浮き出ているものから、クモの巣のように細かい血管が目立つタイプまで実にさまざまです。今度は、足の部位ごとの症例写真ではなく、血管の浮き出方からタイプごとに見てみましょう。

下肢静脈瘤のタイプは専門的には4つあり、そのなかでも大きくわけて3つの「軽症タイプ」と1つの「重症タイプ」に分けられます。各タイプについて詳しくみていきましょう。

「軽症タイプ」の静脈瘤

1クモの巣状静脈瘤

  • クモの巣状静脈瘤
  • クモの巣状静脈瘤

直径1mm以下のとても細い静脈が拡張して、目立っているタイプです。赤い糸のような血管がまるでクモの巣のように広がって見えるのが特徴です。これが進行してもボコボコになってしまうことはなく、見た目以外には症状を感じることはありません。

2網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)

  • 網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)
  • 網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)
  • 網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)

これも、細い血管が拡張してできるタイプ。クモの巣静脈瘤より、やや太めの直径2~3mmの静脈が拡張して目立ったものです。クモの巣状静脈瘤と同じく、ボコボコとしたコブになる症状がでることはありません。

3側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)

  • 側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)
  • 側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)
  • 側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)

側枝(そくし)というのは、枝を表す言葉です。このタイプの静脈瘤は、この後説明します重症タイプの伏在(ふくざい)型静脈瘤から枝分かれした静脈が、瘤化(ふくらんでコブになること)したものです。伏在静脈瘤が高速道路の渋滞だとすると、この側枝型静脈瘤は、高速道路から降りたところの国道の渋滞というわけです。見た目だけでは一般の方では判断がつきづらいかもしれません。伏在静脈本幹の逆流がなく孤立してみられることもありますが、合併している場合も多いので、エコーで検査する必要があります。

「重症タイプ」の静脈瘤

1伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)

  • 伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)
  • 伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)
  • 伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)

重症タイプの静脈瘤はこの1つだけで「伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)」と呼びます。足の“伏在静脈”という静脈がふくらんでボコボコとコブのようになります。ちなみに伏在静脈には大伏在静脈と小伏在静脈の2種類があり、どちらがふくらんでも伏在静脈瘤という分類になります。1種類だけではありますが、下肢静脈瘤の70%はこのタイプです。

先ほどご説明した側枝型静脈瘤よりも上流の太い静脈が膨らむので、より深刻な症状になりやすいと言えるでしょう。伏在静脈瘤はコブになるだけでなく「足のむくみ」、「だるさ」、「足がつる」といった症状で患者さんを悩ませます。

さらにこれを放っておくと、老廃物を含んだ静脈血液が皮膚に炎症を起こしてしまいます。これを繰り返すと、皮膚は徐々に変色しかたくなり、最終的には潰瘍(かいよう)といって皮膚に穴が開いてしまうこともあるのです。

浮き出る足の血管・ふくらみはどう治す?

足の浮き出た血管の正体は静脈で、これがふくらんでコブになるものを下肢静脈瘤といいます。では、この浮き出た血管(下肢静脈瘤)はどうすれば良いのでしょうか?

治療について以下の要点をおさえながら解説していきましょう。

1血管のふくらみ以外の症状は何があるの?

下肢静脈瘤の症状と言えば、やはり静脈血管がボコボコと浮き出てコブのようになるのが有名です。しかし、見た目の問題以外にもさまざまな症状を引き起こします。

詳しくは以下のページで解説しているので、ご覧ください。

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2どんな検査や治療をするの?

下肢静脈瘤の検査の流れは以下の通りです。

エコー検査

視診

まずは目で見て血管のふくらみ具合や部位を確認します。実は我々のような下肢静脈瘤の専門医は、この視診でおおかたの診断がつくことが多いのです。見るだけだからといって侮れません。

エコー検査

エコー検査

次にエコー検査を行います。エコー検査というのは、健康診断でもおなじみのお腹や乳房を検査するときに使用されるものです。たいていの婦人科にも設置されていて痛みのまったくない画像検査です。これでボコボコ出てしまっている血管だけでなく、その原因となっているおおもとの血管を探ることができます。血管の大きさはもちろんですが、どのように走行しているかをくまなく調べます。また、血液の逆流があるかどうかは、カラードップラーという画像技術を使用して動的に診断します。

治療法

硬化療法

硬化療法

コブのある静脈が3mm以下あれば、硬化療法で注射で固めて治療することができます。しかし、3mm以上の太い血管であれば硬化療法ではなく、手術を行う必要があります。手術と聞くと怖いイメージをお持ちかと思いますが、現在は手術といっても、切ったり縫ったりする大きな手術ではなく、カテーテルといって2㎜程度の細いファイバーを使って高周波やレーザーを使用した日帰りでできる手術です。片足15分程度で行うことができ、保険も使えます。

高周波治療とレーザー治療

高周波治療とレーザー治療

3ストッキングを履いていればよくなる?

ストッキングを履いていればよくなる?

ここでいうストッキングは一般的なストッキングではありません。弾性(だんせい)ストッキングといって、着圧の強い医療用のハイソックスを指します。これでふくらはぎを締め付けることにより、血液の心臓への戻りをサポートします。しかし、弾性ストッキングは履いているときには症状は緩和されますが、根本的な治療効果がないのはもちろんのこと、予防効果についてもはっきりとした医学的は根拠はありません。

また、暑い時期はかぶれやすく、ご高齢の方は指の力が弱いので、履くときに指の力を使うかたいストッキングをはき続けられないこともあるでしょう。さらに職場などの制服によっては、ストッキングの着用が難しい場合もあります。比較的軽症の方や、仕事が忙しくてすぐに手術ができない、全身状態が悪いので手術にリスクが伴うという人には症状の緩和という意味で一定の効果はありますが、決して根本治療にはならないということは念頭に入れておいてください。

4手術はしたほうがいいの?

下肢静脈瘤の原因(詳しくは「下肢静脈瘤の原因」参照)は、静脈が逆流して汚れた血液が足にたまることです。弾性ストッキングやセルフケアで逆流が治らない以上、その逆流を止めることがご本人にとってメリットがあるのか、ないのかで、手術の必要性が判断できます。

たとえば足のボコボコが無い方で、エコー画像上は下肢静脈瘤でも、足のむくみやだるさなどの症状が軽ければストッキングの着用が適しています。

しかし、足の血管がボコボコしているのが目立つ場合、足のむくみやだるさなどの症状が軽くてもストッキングなどの対症療法でなく手術をしたほうが良いということになります。

また、血管のボコボコは見えないけれど毎日足のむくみやだるさに悩まされている、なおかつそれが下肢静脈瘤由来だと診断されれば手術をしたほうがよいという場合もあります。治療の必要性や、治療法の選択については患者様によりケースバイケースです。気になる症状が出てきたらご自分で判断せずに専門クリニックを受診し、医師に相談することをおすすめします。

治療をすることで、どういった効果が期待できるか、またどんなデメリットがあるか、医師とよく相談してから判断されるのがよいでしょう。

  • 2020/05/15 2020/07/29
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

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