下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤とは?
正常な静脈は、体のすみずみに行きわたった血液を心臓に戻す役割をしていますが静脈の逆流防止弁が壊れることで発症するのが下肢静脈瘤です。
逆流防止弁が壊れ不要な血液が再び足に戻ってしまうため、戻った血液によって静脈が膨らみ、皮膚を持ち上げることでコブのように見えます。
下肢静脈瘤は良性の病気ですので、治療をしなくても全身の健康状態に深刻な影響をおよぼすことはありません。しかし、自然に治ることがないため、治療を行わないと時間とともに進行します。
下肢静脈瘤のステージ
初期には「むくみ」や「だるさ」といった症状しか無いため、放置しておく人もいますが、進行してコブのように血管が膨らんでくると、人前で足を出すことがためらわれるようになります。
就寝中の「こむら返り」や「かゆみ」などが慢性化して、日々苦しんでいる方もいらっしゃいます。さらに放置した場合、くるぶしが黒ずんできたり(色素沈着)、硬くなったり(脂肪皮膚硬化症)します。もっと重症になると、皮膚に穴があき潰瘍出血することもあります。
下肢静脈瘤の原因
下肢静脈瘤は、どんな人でも起こりうる可能性のあるものではありますが、「下肢静脈瘤が起きやすい人」の傾向はあります。
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1遺伝
片方の親が下肢静脈瘤だと50%、両親ともの場合には90%の確率で子供は下肢静脈瘤を発症するというデータがあります。
それだけ遺伝的な要素が大きく関係します。同じ生活環境や労働環境であっても、下肢静脈瘤にかかる人、かからない人がいるのはこういった理由なのです。
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2立ち仕事
立っている時には重力によって血液が下から上へ流れようとするので、弁には常に負担がかかっていることになります。弁への負担が長時間に及ぶと、徐々に働きが悪くなり、ついには壊れてしまいます。1日10時間以上立っている方は重症化しやすいので注意が必要です。代表的な職業には教師、美容師、調理師、販売員などが挙げられます。
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3年齢
年齢を重ねるに従って、全身を構成している軟部組織(肌や筋肉などの軟らかい部分)の強度が弱くなってきます。静脈弁も軟部組織の一つですので年齢とともに老化し、逆流を防止する力が弱まってきます。こういった理由から、年齢を重ねるほど下肢静脈瘤を発症する人が増えてくるのです。
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4出産を経験された女性
妊娠時には、女性ホルモンの影響により静脈弁が軟らかくなることに加えて、胎児により中心の静脈が圧迫されるために、弁が壊れやすくなります。出産経験のある女性の2人に1人は発症すると報告されています。
このような「自分で調整することができない(あるいは、調整が難しい)原因」によるものもありますが、下肢静脈瘤が起きやすいライフスタイルというものも存在します。太っている人や運動をしていない人の場合は、そうではない人に比べて、下肢静脈瘤を患いやすい状態にあります。
下肢静脈瘤の種類について
下肢静脈瘤は、静脈がコブのように膨らむ伏在型(ふくざいがた)静脈瘤と、それ以外の軽症静脈瘤に分けられます。
伏在型静脈瘤は「大伏在静脈瘤」と「小伏在静脈瘤」に分類されます。軽症静脈瘤には網目状静脈瘤とくもの巣状静脈瘤があります。
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伏在型静脈瘤
大伏在静脈瘤足首から大ももの内がわにかけて走行する静脈で、皮膚に近い部分を走行するため、逆流した血液が貯留するとコブのように皮膚から盛り上がって見えます。
逆流により足の循環障害を引き起こすため、進行したものでは治療が必要となります。
小伏在静脈瘤小伏在静脈は、ふくらはぎの後ろから膝の裏にかけて走行する静脈で、こちらも皮膚に近い表面に位置するため、余分な血液が貯留するとコブのように皮膚から盛り上がります。
大伏在静脈と同じく、逆流により足の循環障害を引き起こすため、進行したものでは治療が必要となります。
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網目状静脈瘤/くもの巣状静脈瘤
皮膚のすぐ下にある細い静脈が膨らんで、青白い色や赤紫色に見える静脈瘤です。伏在型静脈瘤のようなコブには進行しません。治療しなくても足に悪影響はありませんが美容的に改善したい場合は、硬化療法で治療することができます。
ただし、これらの軽症静脈瘤と伏在型静脈瘤が同時に起こることがありますので、伏在型静脈瘤を合併していないか、超音波検査で調べたほうが良いでしょう。
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陰部静脈瘤
女性ホルモンの影響と妊娠による腹部の圧迫で足の付け根や太ももの裏側、陰部周辺にできる静脈瘤です。
生理になると足が重くなったり、痛くなったりすることが大きな特徴です。出産後に症状が消える場合があるため、妊娠中は治療を行わず、出産後半年たってから症状が残る場合にのみ硬化療法を行います。
下肢静脈瘤の検査
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下肢静脈瘤は超音波検査(エコー検査)のみで確定診断が可能です。
エコー検査は、皮膚にゼリーをつけて体の表面からプローブという超音波を発生させる機器を当てて静脈の状態を調べます。
体の表面に接触させるだけなので、痛みなどの体への負担が無く、レントゲン撮影と異なり被ばくもありません。
ただし、下肢静脈瘤の検査は手技に習熟した医師でないと正確な診断が難しいという欠点があります。(当院では静脈瘤を専門とする血管外科医と臨床検査技師が超音波検査を行います。)