下肢静脈瘤について 下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤のコラム

下肢静脈瘤の治療

  • 2020/05/15 2020/07/27
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の主な治療法には高周波やレーザーを使った「切らない」治療法から注射(硬化治療)、ストリッピング手術等、様々あります。

どのような下肢静脈瘤にどの治療が良いのか、またそれぞれの治療のメリットとデメリットについて解説します。

下肢静脈瘤の主な5つの治療法

下肢静脈瘤の主な5つの治療法をご説明します。

1血管内治療

血管内治療

1つ目は「血管内治療」。高周波やレーザーを使った「切らない」治療法です。皮膚を切らずにカテーテルという細い管を血管内に挿入し、内部から静脈を焼いてふさぎます。身体の負担が軽く、日帰りで行えます。さらに、2011年から保険適応になったことから下肢静脈瘤治療の敷居を下げることに成功した画期的な治療です。

2注射(硬化治療)

注射(硬化治療)

2つ目は「注射(硬化治療)」。硬化剤というお薬を、下肢静脈瘤を起こしている血管に直接注射し、つぶす治療法です。硬化剤を受けた血管や静脈瘤は、治療後1週間程度で硬くなり、時間と共に退化して小さく細くなります。半年から1年ほど経過すると、最終的に体内に吸収されて目立たなくなります。受診日当日にできて、10分程度で行える簡易的な治療です。注射というと痛いイメージを持たれるかもしれませんが、この治療では先端が見えないくらい細い針を使用するので、治療時の痛みはほとんどありません。

3圧迫療法(弾性ストッキング)

圧迫療法(弾性ストッキング)

3つ目は「圧迫療法(弾性ストッキング)」。着圧の強い弾性ストッキングでふくらはぎを圧迫して、足に血液が溜まらないように(うっ滞しないように)します。ただこの方法は、他の治療法と違い、根本的な解決策ではありません。あくまでセルフケアとして、症状を緩和する方法です。

4ストリッピング手術

ストリッピング手術

4つ目は「ストリッピング手術」。下肢静脈瘤を起こしている部分の静脈を引き抜き、逆流を止める手術です。100年以上前から行われている手術で、1つ目の血管内治療が保険適用対象となる前は、下肢静脈瘤の根本的な治療法としてもっとも一般的でした。

5高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

5つ目は「高位結紮術」。再発率が高いため現在はほとんど行われていませんが、逆流している静脈血管の根本を糸でくくって逆流を止めるという手術法です。

なお、4つ目のストリッピング手術は、日帰り治療とはいかずに入院が必要になることが多いです。そして、皮膚を切開する必要があります。そのため、日帰りでできて皮膚を切る必要が無い1つ目の血管内治療が普及してきた現在では、行う病院は少なくなってきています(注※1)。

また、5つ目の高位結紮術は再発率が高いため今はほとんど行われていません。つまり、現在はほとんどの医療機関で1から3の治療法で下肢静脈瘤の治療が行われていると考えてよいです。

では、これらの治療法はどのように選択すれば良いのでしょうか?もちろん治療法の選択は、医師が行うことですが、みなさんも前もって知っておいたほうが安心です。

(注※1 ただし大きく蛇行した血管や原因となっている静脈が皮膚から盛り上がっているような場合はストリッピング術が選択されることがあります)

治療法はどうやって選択されるの?

ご説明した下肢静脈瘤の治療のなかで、身体への負担が軽いものを順に並べると

  • 1圧迫療法(弾性ストッキング)
  • 2注射
  • 3血管内治療
  • 4ストリッピング手術、高位結紮術(同位)

以上の順です。

当然、患者様にとっては身体への負担が軽い治療法の方が良いでしょう。また、先ほど述べたように現在ではほとんどの病院で1~3しか行われていませんので、そのなかでの治療法の選び方をご説明します。

その前に、下肢静脈瘤の治療をご理解いただくためには、下肢静脈瘤がどのようにして起こっているかを知っていただく必要があります。

下肢静脈瘤の原因は、静脈血液の逆流の状態によって違います。静脈は血液を心臓に戻す血管です。静脈を通る血液は、重力に逆らって足の血液を下から上へ戻しています。しかし、静脈内にある逆流防止弁が何らかの原因で壊れると重力に逆らえなくなり、結果足に老廃物を含んだ汚れた血液がたまってしまうことになるのです。

治療法はどうやって選択されるの?

下肢静脈瘤の根本的な原因は、先ほどご説明した逆流防止弁と言われる静脈弁が壊れることにより、本来心臓に戻るべき汚れた血液が逆流し足にたまってしまうことです。

今の医療技術では、残念ながら壊れた弁を元に戻すことはできません。そのため血液の逆流を弱めたり、止めることが治療の基本となります。

これを踏まえたうえで、治療の選択としては下記の3つを考慮します。

1逆流している血液の量

逆流している血液の量は、みなさん一定ではなく個人個人によって違います。また、同じ人でも年齢とともに増えていきます。逆流している量がまだ少ない場合は外科的な手段は選ばす、圧迫療法(弾性ストッキング)で症状を緩和することを選択します。ただし、弾性ストッキングによって逆流が治るわけではありません。着用しても症状が強く、日常生活に支障を与える場合は、根本的な治療を考える必要があります。

2逆流している血管の太さ

逆流している血管が1~2mm程度の場合は、注射で治療できる場合が多いです。しかし、それ以上の太さの場合、血管内治療を含めたいわゆる手術による治療を考える必要があります。ただし、先ほどでご説明した血液の逆流の量が多くなるほど血管も太くなるので、血液の量と血管の太さは関連していると言えます。

3逆流している血管の種類

血管の種類によっても治療法が変わります。冒頭でご説明した血管内治療やストリッピング手術が選択されるのは「伏在静脈(ふくざいじょうみゃく)」という、静脈だけです。これ以外の静脈に関しては、注射による治療となります。ちなみに、伏在静脈がもっとも治療が必要な血管であり、放置すると足にうっ血(汚れた血が溜まる)が起こりだるさやむくみ、こむら返りといった憂鬱な症状がでてきます。

上記をまとめると、逆流している血液の量が少なく、症状が軽ければ圧迫療法(弾性ストッキング)や注射を選択、逆流している血管が太くなり、症状が重い場合は、血管内治療やストリッピング術といった手術が必要となります。

さて、下肢静脈瘤の原因と治療法の選び方について、基本的なことをご説明しましたがなんとなくイメージができましたでしょうか。

なお、上記3つだけで治療法が決まるわけではありません。この3つ以外にも、当院では弁の壊れている場所や患者様の希望、美容的観点、生活環境、金銭的問題などを総合して、最終的な治療を決定します。では、次に各治療法のメリット・デメリットを含めもう少し詳しく解説しましょう。

治療別にみるメリット・デメリット

血管内治療(高周波・レーザー)

逆流を起こしてしまっている、弁が壊れた静脈の中にファイバー(カテーテルという細い管)を通して、高周波またはレーザーで血管を内部から焼いてふさぐ方法です。

血管内治療(高周波・レーザー)

焼いた血管は、徐々に小さくなり最後は体の組織に吸収されて下肢静脈瘤のもとになっていた血管はなくなっていきます。逆流している静脈は、足にとって不要な血管なのでふさいでも悪影響はありません。

  • メリット
    • 日帰りが可能
    • 皮膚を切開しないのでキズができない
    • 血管の内部の治療なので体への負担が軽い
    • 術後に痛みが少ない
    • 新しい治療だが保険適応する
  • デメリット
    • 蛇行した血管や太すぎる血管は治療できないことがある
    • 現在、治療技術に精通した医師が少ない

ストリッピング手術

逆流防止弁が壊れてしまった静脈(大伏在(だいふくざい)静脈)を引き抜く手術です。逆流を起こした静脈にストリッパーというワイヤーを通して、ワイヤーに静脈をしばりつけて固定し、ワイヤーと一緒に静脈を引き抜きます。麻酔は下半身の麻酔(脊椎麻酔)か全身麻酔で行われることが多く、ほとんどの施設で入院が必要になります。

ストリッピング手術
  • メリット
    • 蛇行した血管や太い血管の治療を行うことができる
    • 高周波やレーザーなどの特殊な機器がなくても治療できる
  • デメリット
    • 静脈を引き抜くときにまわりの組織を傷めてしまうことがある
    • 術後の痛みや皮下出血が強いことがある
    • 皮膚をメスで切開する必要がある(傷が残る)

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

逆流を起こしているおおもとの血管を根元でしばる(結紮(けっさつ)する)方法です。再発が多く、血管内治療がある現在はほとんど行われていない治療法です。

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)
  • メリット
    • 血栓症(静脈内で血液が固まる)を伴う場合は緊急の術式として行うことができる
  • デメリット
    • 逆流している静脈が残るため再発が多い

注射(硬化療法)

「ポリドカノール」と呼ばれる硬化剤を注入して、血管と下肢静脈瘤そのものをつぶしてしまう治療法です。現在は、薬剤を空気と混ぜて泡状にしたものが使用される「フォーム硬化療法」ともいいます。

注射(硬化療法)
  • メリット
    • 受診日当日に行うことができる
    • 体への負担が軽い
    • クモの巣状・網目状の細かい静脈瘤に対応できる
  • デメリット
    • 3mm以上の血管に対しては効果が不確実
    • 患部が落ち着くまではしこりが残ったり、皮膚に色がついたり、痛みがあることがある(最終的に目立たなくなります)

早期発見・早期治療のため

早期発見・早期治療のため

~足の不快さを感じたら専門医へ~

下肢静脈瘤は痛みが無いことが多く、命にかかわる病気ではないため、症状があっても治療を躊躇される患者様も多くいらっしゃいます。また、自分では治療したくても、専門設備を持たない医療機関へ行った場合、治療に消極的な場合もあります。

しかし、上記で述べたように、病状が進行するほど、治療方法も体に負担がかかるものになってしまいます。そうならないためにも、足の不快さを感じる方は、一度専門の病院を受診するのが良いでしょう。病気はなんでもそうですが、早期発見・早期治療がもっとも大切です。

いつまでも元気な足でいるために、ぜひ勇気をもって受診してみてください。当院も、いつでもお待ちしております。

  • 2020/05/15 2020/07/27
  • 監修医療法人社団康静会 理事長 岡本 慎一 医師

COLUMN下肢静脈瘤のコラム