下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤の治療には、簡易的に下肢静脈瘤の症状を改善する治療と下肢静脈瘤の根本的な治療があります。
下肢静脈瘤の症状を改善する治療
圧迫療法(弾性ストッキング)
圧迫療法とは弾性ストッキングという着圧の強い靴下を履くことで、足から心臓へ血液の返りをサポートする方法です。当グループでは軽症の方やお仕事などの都合ですぐに根本治療が難しい方には医療用の弾性ストッキングをおすすめしています。着圧が強いと言っても、単に締め付けているだけでなく、足首に一番圧力がかかり、上へむかうほど着圧が弱くなり、歯磨き粉のチューブから押し出すようなイメージで設計されています。
下肢静脈瘤では静脈内に血液がたまって膨らんでしまっています。それを適度な圧力で圧迫することで、うっ滞した血管から血液を絞り出す感じで心臓への返りを促します。圧迫は静脈のみに作用しますので、動脈がつぶされて血流が悪くなることはありません。弾性ストッキングを履くことで、逆流がある下肢静脈瘤を根本的に治療することはできませんが、症状の緩和が期待できます。
料金
弾性ストッキング:2,700円(税込)
レックスフィット:5100円(税込)
圧迫療法(弾性ストッキング)
弾性ストッキングの不適切な着用は、局所的な不適切圧迫が加わり、苦痛、症状の悪化(うっ滞)、皮膚障害、血行不良等が生じる可能性がございます。
禁忌(慎重な使用が必要な例)
・動脈血行障害(閉塞性動脈硬化症など)
・蜂窩織炎、血栓性静脈炎などの急性期
・外傷や創傷の急性期など
硬化療法
皮膚の上から見えるクモの巣状・網目状の血管には、硬化剤(ポリドカノール)という薬剤を注入して、静脈をつぶして吸収させます。治療時間は10分程度で、受診当日に治療が可能です。
<起こりえる副作用>
注入時の痛み、内出血、効果した血管の長期残存、注入部の色素沈着、効果の個人差、アレルギー等
下肢静脈瘤の根本的な治療
下肢静脈瘤の根本的治療は手術となります。逆流の強い下肢静脈瘤は機械的な問題ですから、内服薬はもちろん上記の圧迫療法や硬化療法のみで逆流が起こらないように治療することはできないのです。
手術といっても、現在はカテーテルという細い管を使って切らずにレーザーや高周波で治療が可能です。レーザー治療も高周波治療も、原因となる静脈を焼くという治療法は同じで、どちらも血管内にカテーテル(細い管)を挿入して行うという基本的な手技は一緒です。血管を焼くときの熱を出すためのシステムがレーザー光を使用するのか、高周波を利用するのか、機器の違いとなります。一部の症例では、逆流している血管を抜き取る手術(ストリッピング手術)が必要なことがあります。
高周波治療
近年、下肢静脈瘤に対して保険適応となった最新の治療法です。逆流している静脈の中にカテーテルという直径2mmのプラスチックの棒を通し、高周波による熱で静脈を塞ぎます。針穴から静脈まで最短距離でカテーテルを挿入しますので、周囲の筋肉や神経、血管などを損傷することがほとんどありません。
女性にとっては、足にキズができないということも大きなメリットではないでしょうか。現代医療の主流である“低侵襲治療”と呼ばれるにふさわしい治療です。高周波治療により循環が改善し、足に新鮮な血液が供給されるようになります。逆流している静脈は、足にとっては不必要な血管ですので塞いでしまっても悪影響はありません。この治療により、血管コブはもちろんのこと、だるさやむくみ、足がつるといった症状も劇的に改善します。
レーザー治療
血管を焼灼するためのレーザー機器として、当院ではAtoven 1940nmを採用しています。Atoven 1940nmはFDA(米国食品医療品局)、KFDA(韓国食品医薬品安全庁)、CEマーク(商品がすべてのEU加盟国の基準を満たすものに付けられる基準適合マーク)といった、世界各国の厚生省庁認可を受けた安全性・信頼性に優れた医療用レーザー機器です。
※当機器は下肢静脈瘤治療に対して日本国内では未承認です。
1940nmというのはレーザー光の波長を表しています。レーザー光の特徴として、波長が大きくなるほど水吸収率が上昇するという特徴があります。現在、足の静脈瘤治療に対して承認されている機器のレーザー波長は980nmと1470nmだけですが、当院ではより吸収率の高い1940nmの機器を使用しています。
施術の副作用(リスク)
一時的な手術後のつっぱり感、皮下出血、火傷
ストリッピング手術
ストリッピング手術(静脈抜去術)とは、下肢静脈瘤の原因となっている静脈を引き抜いて逆流を止める手術法です。
血管内治療が登場するまではこの手術が主に行われていましたが、現在は血管内治療では対応できないもの(逆流している静脈が非常に大きい方や、静脈が皮膚と接している方、また著しい蛇行がある方など)が適応になります。メスで皮膚を切開して静脈を露出させ特殊なワイヤーを挿入しそのワイヤーとともに引き抜いてしまう方法で、血管内治療に比べて負担は大きくなります。医療機関によっては入院を必要としているところもあります。
血管内治療との併用治療
血管内治療は根本的に逆流している静脈を治療できる方法ですが、一部の症例では見た目の改善を目的として治療を組み合わせることがあります。
硬化療法との併用
硬化療法を症状の改善を目的とした治療として前述しましたが、血管内治療と組み合わせて行うことがあります。根本的には血管内治療で行いますが、カテーテルが入らないような細い血管は硬化療法で治療を行います。
スタブアバルジョンとの併用
コブが非常に大きい場合や、高周波治療だけでは治療が難しい場合にはスタブ・アバルジョン法を併用します。
スタブ・アバルジョン法とは数㎜の針穴から、特殊な器具を使ってコブや静脈自体を切除する方法です。皮膚切開や縫合は必要なく、血管内治療のメリットを生かして最小限の負担で行うことができます。逆流を治療しても、大きくなってしまったコブは皮膚表面で目立ってしまうことが多く、見た目の改善を目的としてこの方法で目立つコブを抜き取るのです。
麻酔について
高周波治療の麻酔は、点滴から薬剤を投与し眠って頂く麻酔と、足に直接する麻酔を組み合わせて行います。歯医者での麻酔から想像できるように、患部へ直接行う麻酔は、麻酔時に針の痛みを伴います。当院ではそういった痛みを感じないように、点滴からの麻酔で一時的にお眠り頂いてから足への麻酔を行います。この工夫により、無痛での手術を実現しています。